知っていて欲しいうつ病のこと

 誰でも「なんだか気分が沈む」「なんとなく憂鬱」と、気分が落ち込むことがあるでしょう。身近な人が亡くなったり、ペットが死んだり、急激な喪失感で悲しみに沈むこともあるでしょう。けれども、心は柔軟にできていて、どんなに悲しく辛くても2~3週間もすると自然に元気を取り戻してきます。
ところが、この激しく落ち込む状態が、3週間以上続いている場合は要注意です。

うつ病になると、病気の兆候が心と体の両方に現れてきます。

● 心の変化

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□ 抑うつ気分の出現
「気分が晴れない」「憂鬱だ」
□ 意欲や興味関心の低下
「何もやりたくない」「以前の趣味もどうでもいいや」
□ 不安・焦燥感
「いろいろなことが心配でたまらない」「イライラする」
□ 思考力・判断力・注意力の低下
「なんだか集中できなくて周りの話に内容が理解できない」「どうすればいいのかわからない」「前は簡単だった状況判断に時間がかるようになった」
□ 自責感
「みんな自分が悪い」「自分はダメな人間だ」
□ 希死念慮
「いなくなってしまいたい」「死にたい」
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(1) 抑うつ気分の出現・楽しみの消失

時に深く落ち込み、強い不安感を訴えることがあります。表情からは笑顔が消え、理由もなく涙を流すことがあります。今まで好きだった番組や趣味が突然つまらなく感じます。
朝に最もひどく落ち込み、夕方になると次第に元気になっていくのも特徴です。そのため、初期症状では、朝が辛くて遅刻をしたり休みがちになったりします。外では動けるのに、家に帰ると横になって動かなくなったということもサインの一つです。

(2) 意欲・興味関心・判断力の低下

何事にもやる気をなくしてしまいます。ちょっと前までしっかりと働けていたのに、急に仕事への意欲がなくなり、興味関心を失う。
これまで簡単に出来ていた仕事に、非常に時間がかかってしまう。人と会うのが億劫で、外出が苦痛に感じられます。主婦は家事ができなくなることがあります。

(3) 不安・焦燥感
ちょっとしたことでもイライラしたり、逆に落ち着きがなくなりじっとしていられなくなったりします。
お金のことを極度に心配したり、重い病気になったのではと思い込んだり、将来のことが不安でたまらなくなります。

(4) 自責感
「自分はダメな人間だ」「自分のせいだ」「申し訳ない」といった、過剰な罪悪感を抱きます。過去のことを繰り返し思い出して悔しがったりくよくよしたりします。「自分がいると同僚に迷惑をかける」と突然辞表を出したりします。

(5) 希死念慮
重症になると、「死にたい」「消えてしまいたい」「自分がいると迷惑がかかる」など、死を望む気持ちが強くなってしまいます。

● 体の変化

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□ 睡眠障害
「眠れない」「朝早く目が覚めてしまう」
□ 食用低下
「お腹がすかない」「食べても美味しくない」「味を感じない」
□ 倦怠感・疲労感
「だるい」「すぐに疲れる」
□ 不定愁訴
「頭が痛い」「めまいがする」「お腹の調子がおかしい」
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(1) 睡眠障害

睡眠障害は、うつ病患者に多く見られます。
・ 布団に入ってもなかなか寝付かない
・ 途中で何度も目が覚める
・ 寝た感じがしない
・ 予定していた睡眠時間よりも2時間早く起きてしまう(早朝覚醒)
これらの症状の中で、「早朝覚醒」が最も特徴的です。

(2) 食欲低下

食欲がなくなり、何を食べても美味しいと思わなくなります。「砂を噛むような感じ」がするそうです。
そのため、体重が激減します。逆にストレスから過食になり、急激に体重が増えることもあります。

(3) 倦怠感・疲労感

すぐに疲れてしまい、体が重く感じられます。以前なら少し休むと回復したのに、休息しても眠っても疲れが残っている感じがします。
日常生活で簡単にできていた、家事や掃除、着替え等がなかなかできなくなってきます。

(4) 不定愁訴

頭痛・腰痛・腹痛・下痢・便秘・胃のむかつき・めまい・痺れ・動悸・ほてり・異常な発汗・肩こり・月経不順など、様々な症状が次々と襲ってきます。
これらは、自律神経のバランスが崩れたために起こってくる症状です。原因がはっきりせずに長く続くようであれば、うつ病の可能性が高くなります。けれども、同様の症状で重い病気である場合もありますので、必ず医師の診察を受けてください。

● 症状が様々で判断しにくい病気

うつ病の症状は人によって全く違います。心の症状が重いけれど体の症状はないとか、逆に体の症状が重くうつ病のようであるのに、心のほうは自覚症状がない等、一見して判断できないところが「うつ病」の難しいところです。
本人は、自覚症状があっても、「知られたくない」「なんとかなるだろう」と隠す傾向にあるため、ひどくならないと周囲が気づかない場合があります。また、本人が全く無自覚なのに、周囲から「うつ病かも知れない」と気づかれることがあります。

● 脳の機能障害だから治療が必要

うつ病はほかの病気と違って何らかの数値で現れてくるものではありません。
そのため、本人がどんなにつらくとも「怠けているんじゃないの」「心が弱いから」「もっとしっかりしなさい」と思われてしまいます。
けれども、「うつ病」は心の持ちようで病気になっているわけではなく、脳の機能が低下して起こる病気です。これにさらに「心的ストレスや社会的ストレス」によって症状が重くなり複雑になって来ているのです。
そのため、医師による診断と薬による治療が必要です。

脳に何らかの以上が起きると「神経伝達物質」が少なくなり、脳からの命令が伝達しにくくなります。そのため感情や思考・活動する力が弱く鈍くなっていきます。つまり、脳のエネルギー不足で不調が起きている状態と言えます。
だから、本人がどんなに「ちゃんとやりたい」「一生懸命働きたい」「やる気がないわけじゃない」と思っても、体と心が動かない。それが「うつ病」です。
外からは、「やる気がない」「怠けているように見える」状態であるために、本人がどんなに苦しんでどうにもできない状態であったとしても、勤務先や家庭で誤解され、非常に苦しむ病気でもあります。

● 看護師免許があればいつでもどこでもやり直せる

看護師の免許があれば、どこに行ってもどんな形ででも就職に困りません。
辛く重い症状を抱えているなら、思い切ってしっかりと専門家を受診し、休息を取りましょう。
転勤してもっと自分の今のペースでできる仕事の形態にすることもよいでしょう。心と体がすっかり壊れてしまう前に、いつでもやり直せるのですから、腰を据えて治療しましょう。
体の症状が軽くなれば、心の方も次第に軽くなっていくはずです。「いつ倒れてもおかしくない」と感じるなら、もう危険のサインです。

● Webサイトや専門書を活用してください

でもやっぱり治療には踏み切れない…。そのような方は、Webで「うつ病」などのメンタルヘルスの情報を掲載している良いサイトがあります。病気に対する正しい知識と治療法を知っておくことも、治療のひとつになります。ぜひ利用してみてください。
また、セルフケアのサイトもあります。自分でケアしていくための良いヒントがありますので、検索してみることをオススメします。

インターネットでメンタルヘルスをすることができるサイトもあります。
精神科医がネットのSkype(動画付き電話)などを利用して診断・治療をしてくれます。これならば、同僚に知られることなく自分ですることができます。
けれども一番いいのは、しっかりと今の自分に向き合って、真正面から「うつ病」の治療をすることが大切だと思います。
ここでご紹介した兆候でたくさん当てはまった方は、明日の自分を信じて、治療の方向へ切り替えていただけますよう、心より願います。

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